日本酒輸出、13年連続最高更新ストップ! 中国・アメリカの影響で前年比減少

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全国約1,700の酒蔵が所属する日本酒造組合中央会は、2024年2月8日に「2023年度日本酒輸出実績」を発表しました。

日本酒造組合中央会は2023年度(1月~12月)の日本酒輸出総額が410.8億円(前年比87%)、数量が2.9万キロリットル(前年比81%)だったと発表しました。

13年連続で過去最高額を更新していた日本酒輸出ですが、今期は初めて減少に転じました。この減少は輸出金額・数量の約半数を占める中国とアメリカの影響が大きかったと考えられます。

中国では景気減速や日本産水産物の輸入停止に伴い、高級日本食レストランの需要が減少し、日本酒の販売も落ち込みました。アメリカでは2022年に入荷した在庫の調整や、人員不足、インフレによる消費マインドの低下などが影響したと考えられます。

数量に比べて金額の減少は小さく、引き続き高付加価値な日本酒が輸出されている点は明るいニュースです。今後の課題としては中国やアメリカ市場の回復に加え、新たな輸出市場の開拓などが挙げられます。

引用:日本酒造組合中央会プレスリリース

 中国市場は低迷したが、韓国・台湾は好調

国別の輸出金額は、

  • 1位:中国 約124.7億円(前年比88.0%)
  • 2位:アメリカ 約87.6億円(前年比84.4%)
  • 3位:香港 約60.2億円(前年比84.7%)

となりました。

中国では景気後退や日本産水産物輸入停止の影響により、高級日本食レストランでの需要が減少。高級酒として人気だった日本酒も販売が落ち込みました。一方、韓国は約29.0億円(前年比115.1%)、台湾は約26.8億円(前年比120.5%)と、いずれも大幅な増加となりました。

輸出数量は、

  • 1位:アメリカ 約6,502キロリットル(前年比71.6%)
  • 2位:韓国 約4,192キロリットル(前年比103.4%)
  • 3位:台湾 約3,104キロリットル(前年比100.9%)

となりました。

アメリカは在庫調整やインフレの影響を受け減少しましたが、韓国と台湾は好調を維持しました。2023年度に輸出先国数は75ヵ国に達し、日本酒の海外での人気は依然として高いことが伺えます。今後の課題としては、中国市場の回復に加え、新たな輸出市場の開拓などが挙げられます。

米国市場は地域差が大きく、多角化が課題。中南米やRCEPによる追い風も期待

米国は日本酒の認知度が地域によって大きく異なり、ニューヨーク州やカリフォルニア州では高い一方で、テキサス州やフロリダ州ではまだ低い状況です。今後は輸出先国・地域の多角化が重要であり、東南アジアに加え、日本食レストランが急増している中南米のブラジルメキシコも注目されています。

中長期的には、「アジア・オセアニアにおけるRCEPによる関税の段階的撤廃」「カナダや台湾との間での有機表示の同等性承認」などが追い風になると期待されます。RCEPは日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN加盟10ヵ国による地域的な包括的経済連携協定です。

そして、有機表示の同等性承認により、JAS認証有機日本酒が輸出可能となりました。相手国との相互承認が進むことで、海外のオーガニック市場に日本酒が広がっていくと考えられます。

 日本酒造組合中央会

Yasuyuki Ito

Yasuyuki Ito

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。30代はワインにハマり、40代は日本酒にハマる。さて、50代は何にハマろうか。

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