2018年度と2019年度の一次試験の内容で最も大きな違いは「日本酒と料理のペアリング問題」が増えたという点です。昨今では日本酒を取り巻く環境が変わり、日本酒単体だけでなく料理との相性も注目されています。おそらく2020年度以降の試験においてもペアリング問題の出題数は増えていくと予想されます。
そこで今回はJ.S.A SAKE DIPLOMA教本(2版)をに掲載されている日本酒と料理の相性(以下ペアリング)について調査した結果をご紹介します。今後、ペアリング問題を勉強する際の参考にしていただけると嬉しいです。
種類別掲載料理数と割合
教本に掲載されている料理の数は290です。これだけの数のペアリングを全て暗記するのは現実的ではありませんし、ここだけにそれだけの時間を割くのも得策ではありません。そこで大切なことは料理の種類によってどのような特徴があるのか把握することです。ひとつひとつのペアリングを覚えなくても特徴さえ把握しておけば、ある程度の問題は解けるはずです。
料理の種類は「和食」と「世界の料理」に分けられています。それぞれの掲載数はほぼ同じです。最も掲載数が多い料理は「肉料理」で52(18%)で、次いで「魚貝・甲殻類」が46(16%)となっています。
日本酒の温度帯
教本のペアリングの説明には必ず日本酒の温度帯が記載されています。温度が問われる設問は過去に出題されたことはありませんが、念のため料理の種類別に温度帯の傾向を掴んでおきましょう。下記の表は料理の種類別にどの温度帯が記載されているのかまとめたものです。教本に載っている温度帯は全部で11種類あり、網掛け部分が最多温度帯になります。
大雑把に言ってしまうと、冷たい料理は10〜14℃程度の温度帯にして、温かい料理は14℃以上に温度帯にする傾向があります。ちなみに燗酒に対応する料理も多数あるのですが、ほとんどが「45℃前後」です。
燗酒に対応している料理
料理の中には燗酒にだけ対応しているものもありますが、多くの場合、「冷酒・常温+燗酒」という扱いで記載されています。下の表は料理の種類別に燗酒に対応している料理数をまとめたものです。
顕著な特徴は「世界の料理」には燗酒に関する表記が1つもないということです。そして、和食の「椀盛り」に関しては全ての料理が燗酒に対応しています。また「鍋物」に関しても1つを除き全ての料理が燗酒に対応しています。
日本酒の特定名称
料理によって合わせる日本酒の特定名称も記載されています。ただ、下の表を見れば分かるようにほとんどが「純米酒」です。
ほぼ全ての料理で「純米酒」と記載されていますが、蒸し物に関しては「純米吟醸酒」、和え物・酢の物に関しては「吟醸酒」が最も多く記載されています。ちなみに「指定なし」とは特定名称ではなく、古酒や貴醸酒など特別な日本酒が記載されているケースです。
山廃系酒母の割合
山廃系酒母の日本酒が合う料理は意外と多く存在ます。下の表は「山廃系酒母」と記載されている料理数をまとめたものです。本来、山廃系酒母には大きく「生酛」と「山廃」がありますが、それぞれの区別は教本ではなされていません。
基本、味付けの濃い料理には山廃系酒母の日本酒を合わせる場合が多いです。ただし、淡白な味わいの刺身や握り寿司でも付けるソース(醤油、ポン酢など)によって山廃系酒母が合う場合もあるようです。
古酒の割合
下の表は「古酒」もしくは「熟成古酒」を記載されている料理数をまとめたものです。
全体的に数はそれほど多くありません。特に和食に関しては古酒に合わせられる料理はほんのわずかです。一方、世界の料理に関しては古酒に合う料理が多いです。特に肉料理に関しては掲載数の約4割が古酒に合います。またチーズに関しても4割が古酒に合うことを知っておきましょう。
以上、6つの調査資料をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。このような傾向を知っておくことで、もし覚えていない料理が出題された場合でも解答することが可能になります。