先日、日本酒教室を開催させていただいている飲食店のオーナーと一緒に、滋賀県湖南市にある酒蔵・北島酒造の酒蔵見学に参加してきました。今、各地の酒蔵は仕込みの真最中の慌ただしい日々を過ごしているのですが、同蔵の社長自ら蔵を案内してくれました。
京都から電車で行ける酒蔵
今回伺った酒蔵は滋賀県湖南市にある北島酒造。京都からはJR琵琶湖線で草津駅まで行き、そこからJR草津線に乗り換えて甲西駅まで行きます。ここまでかかる時間は約40分。酒蔵は甲西駅から徒歩10分ほどで到着します。全国の酒蔵マップを作成して分かったのですが、地方の酒蔵の多くは電車では行けない郊外にあります。だから北島酒造のように電車で行ける酒蔵は実は珍しいのです。
10分ほど歩くと住宅街に入ります。その一角に酒蔵はあります。見るからに歴史を感じさせる建物で「THE酒蔵」という感じの佇まい。想像していたよりも敷地が広く規模が大きかったです。
建物に入ると女性スタッフが迎えてくれました。しばらく待つとひとりの男性が。彼がこの北島酒造の代表・北島輝人氏です。なんと彼で十四代目なんだとか。東京農業大学醸造学部を卒業し、酒造研究所で働いた後、当蔵の当主になりました。知的で誠実な雰囲気がある方です。
お米の香りが漂う酒蔵
北島氏の案内で酒造の各工程を案内していただきました。まず洗米から浸漬、吸水の現場を見ました。精米歩合によるお米の大きさがどれだけ違うのか、吸水によってお米がどのように変化するのか。普通酒と吟醸酒の吸水方法の違いなど、テキストで学んだことが実際の現場で確認できて勉強になりました。
その後は製麹工程へ。写真で見たサウナのような麹室を見せていただきました。こちらも普通酒と吟醸酒による製麹方法の違いを確認できました。そして、米麹の試食。ほんのりとした甘さが印象的です。その後、酒母工程を見学。醪に投入する直前の生酛を見せていただきましたが、色が真っ白でそのまま食べても美味しそうでした。実際食べたら酸と苦味が強い、ということです。
最後は醪のタンクを上から覗きました。発酵中のタンクは表面が泡立っています。特に印象に残ったのは泡あり酵母と泡なし酵母の見た目の違い。泡あり酵母を使用した醪の表面は、まるで綿菓子のような泡で覆われています。そしてその泡を消すために機器が動いています。北島氏曰く、今は泡なし酵母を使用する蔵が多いのだとか。しかし、昔ながらのしっかりした味わいの酒を造る場合は泡あり酵母を使っているようです。
12種類の試飲で酔っぱらい
酒蔵見学は約30分で終わりました。その後は待ちに待った試飲です。試飲室には12種類の日本酒が並んでいました。試飲した12種類のお酒は次の通り。
- 吟吹雪 55%精米 生酒 7号酵母
- 山田錦 55%精米 生酒 9号酵母
- 玉栄 55%精米 生酒 7号酵母 タンク違い2種類
- びわこのクジラ 普通酒 9号酵母
- 純米吟醸 杉山玉栄 55%精米 生原酒 7号酵母
- 酸基醴酛 みずかがみ 50%精米 火入れ原酒 9号酵母
- 酸基醴酛 玉栄 55%精米 火入れ原酒 7号酵母
- 生酛純米 渡船 88%精米 火入れ 6号酵母
- 生酛純米吟醸 杉山玉栄 50%精米 瓶一回火入れ 6号酵母
- 生酛純米 玉栄 65%精米 加水火入れ 6号酵母
- 生酛純米吟醸 渡船 50%精米 瓶一回火入れ 6号酵母
生酒から順番に飲んでいきましたが、生酒は本当に「旨い」という表現が適切なお酒でした。同行した女性は1杯目の吟吹雪に心を奪われていました。後半に行くほど熟成や熱燗に向くお酒に変わっていきます。どちらかといえば僕は後半のお酒が好みで、最初は飲みにくいものの30分ほど時間を置き、温まってくると本来の味わいと香りが楽しめます。ちなみに酸基醴(あまざけ)酛とは速醸酒母が開発される前に使用されていた酒母で、速醸酒母に近いものだということです。
最後は試飲したお酒の中から好きなお酒を四合瓶に詰めて持ち帰っていいですよ、と言われたため、僕は「酸基醴酛 みずかがみ 50%精米」を選びました。滋賀県で開発された「みずかがみ」という飯米で造ったお酒、これから注目です。
約1時間半の酒蔵見学でしたが、本当に充実した時間を過ごせました。この日の夜はお土産で頂いた日本酒と、酒粕を使った粕汁が晩御飯になりました。