先日、1月12日(日)にインターコンチネンタルホテル大阪で開催された「GI日本酒シンポジウム」に参加してきました。現在、国内の清酒関連のGI(地理的表示)は3つあります(「日本酒」は除きます)。最も古いのは「白山(はくさん)」で2005年、次に「山形」の2016年、そして最も新しいGIが「灘五郷(なだごごう)」で2018年に指定されました。ちなみに白山は石川県で、灘五郷は兵庫県です。
今回、このイベントを主催したのは大阪、仙台、金沢の国税局です。ワインにおいては原産地呼称制度が当たり前で、小売・消費者ともに認知度が高いのですが、清酒に関してはまだ認知度が異常に低いのです。SAKE DIPLOMAの公式教本にもGIに関する情報が掲載されているのですが、なんと焼酎の項目に掲載され、たったの2ページしか割かれていません。このような状況に危機感を抱いた国税局がGIの認知を上げるために消費者を対象にした今回のようなイベントを開催したのでしょう。GIによって日本酒が売れるようになれば当然税収も上がります。
日本国内3つのGIを知る
それでは国内3つのGIにおける製法等の条件をご紹介しましょう。
灘五郷 |
|
---|---|
山形 |
|
白山 |
|
これを見ると、最も古い白山の製造条件が最も厳しいことが分かります。ただし、この条件の厳しさによりGIを取得できない酒蔵が増えたという課題があるようです。そのような課題を解消するために、灘五郷と山形は条件を緩くしたようです。まず緩めの条件にして、その後条件を変えGIの種類を増やしていくのだとか。
ただし、この条件を見て気になるのが「酒米」が産地指定されていないということ。GI山形の日本酒なのに酒米の産地は兵庫県でもOK。ワインで例えれば、ボルドー産のブドウを使ってブルゴーニュでワインを造るようなこともOKなのです。イベントの質問タイムでは、「この条件でGI指定することに意味があるのか」というような質問が出ていました。
GIと聞くと厳格な審査を突破した素晴らしい日本酒というイメージがありますが、そんなことに興味を持たない酒蔵もたくさんあります。例えば十四代は山形を代表する日本酒ですが、この酒はGI山形の審査を受けていません。誰かが決めた条件で酒造りをおこなうのではなく、自分たちが作りたい酒造りを行う。そのようなポリシーを持つ酒蔵はGIには適していないのでしょう。
GI取得で得られること
前述した条件を見れば分かる通り、GIの審査が通った酒だからといって美味しいとは限らない、ということが分かります。むしろGIの審査を受けていない酒の方が個性があり面白いのではないでしょうか。では、GIは一体誰のためのものなのか。GIがあることで最もビジネスが進めやすくなるのは「小売」だと思います。GIマークが付いた商品は消費者(特に酒に詳しくない人)から安心を与えられるため、小売の現場では積極的にGI商品を販売するのではないでしょうか。
そしてGI商品の販売数が増えれば、結果的に酒造メーカーの売上が増えます。つまり、GIというのは消費者が受けるメリットよりも酒造メーカーが受けるメリットの方が大きいと考えられます。それも知名度の低い地方の小さな酒造メーカーほど受けるメリットは大きいでしょう。GIは消費者にとっての美味しさを担保するものではなく、地方の酒蔵を守るために必要なものだと考えます。