日本酒の国内出荷量が減少を続ける中で、既存の酒造メーカーを守るために国税庁は戦後から今に至るため新規製造免許を発行してきませんでした。一部、試験醸造という形で大学や研究施設には製造免許が与えられていましが、一般企業が参入することは難しく、敢えて海外で日本酒製造を行っている日本人がいるほどです。個人的にはこのような競争原理から外れるようなことは、却って国内メーカーの競争力を弱め業界衰退の要因になると考えます。
このような過去の慣例に囚われがちな国税庁が珍しく、小売店に日本酒の製造免許を交付しました。その小売店とは東京の「はせがわ酒店」で、8月3日から東京駅構内の商業施設「グランスタ」にて開業しています。店内の醸造スペースでは酒米を蒸し、米麹を造り、特注の冷蔵タンクで発酵させています。製造するのは日本酒、どぶろく、リキュールの3種類です。
今回敢えて小売業だけに免許を交付したのは既存の酒造メーカーと競合しないからでしょう。ワインやクラフトビール、クラフトジンなどは新規参入が相次ぎ、市場が盛り上がっています。日本酒も一部盛り上がりを見せていますが、これはメーカーの努力というよりも小売・飲食店の貢献が大きいと考えます。一昔前、金融機関に対して護送船団方式が採用されていたように、日本酒メーカーも同じように保護政策で守られています。これが続けばその行く末は誰もが想像できるでしょう。
パリで醸造を始めたWakazeという酒造メーカーがありますが、海外の人から見れば、なぜ日本人が日本で日本酒を造れないのか不思議に思うでしょう。本来、このような日本酒スタートアップ企業は日本で育てるべきではないでしょうか。早くこの保護政策が無くなり、日本で日本酒スタートアップ企業が続々と立ち上がることを願っています。