酒造好適米として最も有名なのが「酒米の王様」と呼ばれる山田錦です。山田錦は質の高い日本酒を生み出す米として高く評価されています。特に兵庫県産の山田錦は生産量も多く、全国の酒蔵が酒造りに使用しています。そんな山田錦の生産量が急激に増えている県があります。それが栃木県です。
農林水産省のデータによると、2015年の栃木県産山田錦の生産量は約400トンだったのですが、2020年の生産量は2.4倍の986トンまで増えました。この数値は生産量2位の岡山県、3位の広島県に次ぐ4位となります。なぜ、これほどまでに栃木県産山田錦の生産量が増えたのでしょうか。
その理由は「獺祭」にあります。山口県の酒造メーカーである旭酒造は獺祭を造るために全国各地から山田錦を買い付けています。栃木県は2014年頃に旭酒造から山田錦の栽培を打診され、県内約40の契約農家が山田錦の栽培を開始しました。
山田錦は栽培が難しく、当初は品質が上がらず生産量も増えませんでした。その結果、途中で栽培を辞退する農家も出たのだとか。しかし、農家同士の情報共有と技術向上の成果が実り品質が向上しました。そして2020年に行われた旭酒造による2019年産米の酒米品質コンテストで県内の農家が1位に選ばれたのです。さらに翌年のコンテストでも2位に選ばれました。
現在は旭酒造の「獺祭」用の山田錦の生産がメインとなっていますが、今後は獺祭以外でも栃木県産山田錦が使われる可能性が高いでしょう。栃木県産山田錦が使われた日本酒を飲む機会がある時は、ここで紹介したような背景があることを思い出して飲んでみてはいかがでしょうか。