【地理的表示】GI喜多方の特徴と基準

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2024年12月20日に、新しい日本酒の地理的表示「GI喜多方」が指定されました。詳細は国税庁のWebサイトにて確認できますが、非常に細かく専門的な用語が多いため、ここでは必要最小限な情報を分かりやすくご紹介します。

 特性

喜多方の純米酒はやわらかでまろやかな味わいと、りんごやバナナのようなフルーティな香りが特徴です。口に含むと爽やかな甘さが広がり、後味はすっきりとキレがあります。このお酒は旬の野菜や山菜、特に喜多方が誇る甘みのあるアスパラガスと相性抜群です。また、地元で採れるそばの実を使った「山都そば」など、素材の風味を生かしたシンプルな料理ともよく合います。

 自然環境

喜多方(福島県喜多方市と西会津町)は会津盆地北部に位置し、三方を飯豊連峰、越後山脈、磐梯山に囲まれた自然豊かな地域です。冬に降る2.5m以上の豪雪は地層に染み込み、伏流水となって多くの河川や湧水を生み出します。この水は非常に柔らかく、喜多方の酒の丸みや旨味を生む重要な要素です。

また、盆地特有の昼夜の寒暖差が米の甘みを引き出し、稲わらを肥料として使うことで土壌が豊かになり、良質な米作りが続けられてきました。特に五百万石やコシヒカリなど、この地域で育つ米は柔らかく甘みがあり、酒造りに最適です。さらに、冬の厳しい寒さも酒造りに適しており、この環境が柔らかで芳醇な酒質を生み出しています。

 人との関わり

喜多方の酒造りは江戸時代初期の1631年に佐藤家が酒蔵を営んだことから始まり、江戸時代末期から明治時代にかけて半商半農の豪商や地主たちによって発展しました。この地域は豊富な水や盆地特有の気候に恵まれ、柔らかく甘みのある米が育つ環境が整っており、米の流通を促進するために水車場が設置され、効率的な精米が行われました。さらに、余剰米の活用策として酒造りが進み、米の旨味や甘みを生かした酒が造られるようになりました。

地域の酒蔵は会津藩からの支援を受けられない中でも技術を磨き、協力し合いながら成長しました。特に冠木家の5代目当主・冠木房八は醸造技術の改良に尽力し、その技術は広く共有され、喜多方の酒造業の基盤を築きました。また、野沢宿の石川市十郎は農業技術の改良にも取り組み、地域全体の発展に寄与しました。

1922年には「耶麻醸友会」が設立され、互助精神のもとで技術を研鑽し、摂津の醸造法も取り入れながら酒質の向上が図られました。現在も「喜多方杜氏組合」が伝統と新技術を融合し、地域の酒造りを支えています。さらに1995年以降は減農薬栽培による酒米の生産にも取り組み、地域のテロワールを守りながら酒造りを発展させています。このように、喜多方の酒は伝統と革新、地域との結びつきを重視しながら進化を続けています。

 指定基準

 原料

  • 米及び米こうじには、産地の範囲内で収穫した米のみを用いていること
  • 水は産地の範囲内で採水した水のみを用いていること
  • 酒税法第3条第7号イに規定する「清酒」の原料を用いていること。

 製法

  • 産地の範囲内において製造すること
  • 貯蔵する場合は産地の範囲内で行うこと
  • 産地の範囲内で、消費者に引き渡すことを予定した容器に詰めること

「産地の範囲内」とは福島県喜多方市及び隣接する同県耶麻郡西会津町を指します。

 ロゴマーク

ロゴは「酒」の古代文字をシンボル化し、喜多方を象徴する蔵や豊富な飯豊山の伏流水を表す水、酒瓶を取り入れたデザインです(引用元:福島民報

Yasuyuki Ito

Yasuyuki Ito

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。30代はワインにハマり、40代は日本酒にハマる。さて、50代は何にハマろうか。

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