今まで日本最南端の日本酒造りは、沖縄県うるま市にある泰石酒造が担い、「黎明」という銘柄の商品を販売してきました。しかし、昨今事業継続が困難になり、その事業を引き継ぐことになったのが、石垣島で泡盛を蒸留している請福酒造です。この事業継承により、最南端の日本酒酒蔵が石垣島に移ることになります。販売開始は2026年の夏を目指しているということです。
うるま市よりも更に南の石垣島で日本酒造りが可能なのでしょうか。まず、原料米に関してですが、実は石垣島は沖縄県内有数の米どころで、県内の生産量の半数以上を占めています。品種は「ひとめぼれ」が中心です。この米を使った日本酒はすでに市場に出ていますので、品質には何も問題はないでしょう。また、昨今は広島県を中心に高温登熟耐性を持った酒米が開発されていますので、そのような米を石垣島で栽培すれば、新たな可能性が生まれると思われます。
水に関してはどうでしょうか。島内には県内最高峰の於茂登岳(標高526メートル)を筆頭に連なる山から流れる軟水があります。石垣島をドライブしたことがある方なら分かると思いますが、意外と山が多いんです。日常生活で使用される水は主にこの山や川から流れる伏流水を使用しているので、こちらも品質に問題ないでしょう。
個人的な希望ですが、一般的な日本酒だけでなく、石垣島の食材を使用したクラフトサケにも挑戦してもらいたいです。正直に言えば、わざわざ石垣島まで行って通常の日本酒を飲みたい人は少ないでしょう。気候的に糖度の高い日本酒は飲みにくいと思います。一方、従来の日本酒の枠に縛られないクラフトサケであれば、島の気候に合わせた酒造りができ、きっとそれは島に訪れる人にも受け入れられると思います。
今の若者は日本酒とクラフトサケを分けて考えることはありません。自分にとって美味しい商品であれば、伝統的な日本酒であろうと、新しいクラフトサケであろうと受け入れられるはずです。頑なに伝統を守り廃れていくのであれば、消費者に受け入れられる商品開発を優先してもらいたいです。
2年後の夏、どのような日本酒が誕生するのかワクワクしています。その夏、僕はきっと石垣島に訪れて、この日本酒を真っ先に飲んでいるでしょう。